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自殺防止活動が新しい職業になれるように提案
=現在の制度では、自殺防止運動に専念する人はふえない
うつ病、自殺念慮の治療技術は、薬物療法以外にもある。アメリカでは、研究がすすんでいる。だが、日本では、薬物療法以外の治療法は、現状の健康保険制度では、ひろまりにくい。研究、指導する人の収入が保障されない。自殺の減少には、
- (A)ストレスを与える社会制度の改善(たとえば、いじめ防止策、過労防止策、生活保護、虐待防止の施策など)と、
- (B)うつ病・自殺念慮の治療予防技術の向上
の2つの側面からすすめるべきであるが、どちらも、むつかしい。
(B)後者も、現状では、真剣にとりくむ職業人の確保がむつかしい。医者、看護師には、他の病気の治療で忙しい。医者は、うつ病は薬物療法でいっぱいである。
臨床心理士などカウンセラーがうつ病の新しい治療技術を習得しても、現在の診療報酬では、対象とはならないので、治療費が高くて、患者がカウンセラーのもとにはいきにくい。
病院で行なっても報酬が少ないので、病院がカウンセリングを導入する動機にもならない。こうして、うつ病治療のカウンセラーになるという人もふえない。カウンセラーは、学校のカウンセラーになる人が多いが、うつ病よりも、子ども独特の領域のカウンセリング技法が必要とされるので、うつ病の治療技法を研鑽する余裕がなくなる。電話相談、傾聴型のカウンセリングも一定の効果があったが、自殺が減少しておらず、従来の方法では、限界もある。
薬物療法以外のうつ病治療法は、職業にならない現在の制度では、今後も、行なう人は少ないだろう。うつ病の側面からの自殺の減少はむつかしそうだ。
薬物療法以外にも、うつ病の心理療法がある。自殺防止は、むつかしい活動だ。苦悩の大きい人と長期間、かかわるので、そういう人たちの、苦悩を共感し、支援側も強いストレスになる。むつかしい事例だと「精神科医へ」と言いたくもなるだろう。だが、それでは、限界がある段階にきている。日本は先進国の中で、自殺率が一番高い。自殺防止はむつかしい活動である。
種々の領域に特化した職業、または、認定資格があるが、自殺防止技術(?)にもあっていいのではないか。薬物療法でうまくいかない人の相談、治療を推進していく職業人を育成する制度として、2つの案を考えてみた。
- (1)国家資格の認定
うつ病を薬物療法以外の手法で治療する人に、または、うつ病・自殺の予防治療を行なう指導員の国家資格を認定して、健康保険から報酬が出るようになれば、病院でも導入するだろう。また、この資格を持つ人が保健所などで勤務できるようになれば、専念する人がふえるだろう。自治体に一人くらい、自殺防止・うつ病治療・予防の専門家でいてもいい。
- (2)拠点病院の指定
もう一つは、うつ病治療の拠点病院を指定して、そこの心理療法者にだけは、助成金を支給する方法である。もちろん、カウンセラーならだれでもいいというのではなく、効果あるうつ病の治療技法を認定して、その技術を習得していることを条件とする。
患者は安い費用で治療できる。一般病院での、うつ病の薬物療法は、期間限定として、限度まで利用しても治らない患者は、うつ病治療の拠点病院を紹介する。そこで、難治性のうつ病の併用療法と、最初から薬物療法以外を希望する患者の心理療法を行なう。
薬を次々と変えて、副作用によって、悲惨な状況になることも防止する助言もしなければならない。
自殺減少は、国家の大事業である。種々の病気からも、うつ病になる。病院でも、入院患者に自殺されている。うつ病治療、自殺の防止にたずさわる活動も、職業として成り立つようにしないと、自殺防止を専門的に行なう人が増えない。うつ病・自殺念慮の相談、治療をボランティアでこれまでやってきて、そう思う。ボランティアでは、こんなむつかしい活動を行なう人などふえはしない。では、医者、看護師、職業カウンセラー、大学の心理学者、保健師などがやってくれるかというと、うつ病、自殺念慮だけには専念したくなくて、実施してこなかった。これだけでは、職業とならなかったからだろう。しかし、これだけに専念してもいいくらいに、自殺予防(治すことまでできる人)はむつかしい仕事である。これまで、むつかしいうつ病は、みな、精神科医にまわししてきた。これからも、うつ病、自殺念慮は、精神科医に、まわすだろう。だが、健康保険の診療報酬制度のせいと、患者が多いために、精神科医は薬物療法中心である。
うつ病、自殺念慮の予防治療をすすめる新しい担い手を育成しないと、自殺は減少しそうもない。